一般貨物自動車運送業(トラック運送業)の許可要件として、経営者に関する「欠格事由」と、法令遵守のための「役員法令試験」があります。
1. 許可を受けられない「欠格事由」とは
欠格事由とは、これに該当すると許可を受けられない、という要件です。欠格要件とも呼ばれます。
貨物自動車運送事業法第5条の第1号から第8号にその規定があり、以下の全てに該当してはいけません。
第1号
許可を受けようとする者が、一年以上の拘禁刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者であるとき。
執行猶予がついた場合は、猶予期間が経過した日をもって欠格事由には該当しなくなります。
第2号
許可を受けようとする者が、一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から五年を経過しない者(当該許可を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の通知が到達した日(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十五条第一項の通知が到達した日(同条第三項により通知が到達したものとみなされた日を含む。)をいう。第四号において同じ。)前六十日以内にその法人の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。第六号及び第八号において同じ。)であった者で当該取消しの日から五年を経過しないものを含む。)であるとき。
許可の取り消しを受けてから5年間は許可を受けることができません。また法人においては、聴聞の通知があった日から60日前に役員だった人も含まれます。ここでいう役員は、役員と同等以上の職権又は支配力を有する者を含みます。
第3号
許可を受けようとする者と密接な関係を有する者(許可を受けようとする者(法人に限る。以下この号において同じ。)の株式の所有その他の事由を通じて当該許可を受けようとする者の事業を実質的に支配し、若しくはその事業に重要な影響を与える関係にある者として国土交通省令で定めるもの(以下この号において「許可を受けようとする者の親会社等」という。)、許可を受けようとする者の親会社等が株式の所有その他の事由を通じてその事業を実質的に支配し、若しくはその事業に重要な影響を与える関係にある者として国土交通省令で定めるもの又は当該許可を受けようとする者が株式の所有その他の事由を通じてその事業を実質的に支配し、若しくはその事業に重要な影響を与える関係にある者として国土交通省令で定めるもののうち、当該許可を受けようとする者と国土交通省令で定める密接な関係を有する法人をいう。)が、一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から五年を経過しない者であるとき。
許可申請者の親会社や子会社、グループ会社が許可の取り消しを受けた場合も、その日から5年を経過しなければ許可を得ることができません。
第4号
許可を受けようとする者が、一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消しの処分に係る聴聞の通知が到達した日から当該処分をする日又は処分をしないことを決定する日までの間に第三十二条(第三十五条第六項において準用する場合を含む。)の規定による事業の廃止の届出をした者(当該事業の廃止について相当の理由がある者を除く。)で、当該届出の日から五年を経過しないものであるとき。
許可取り消し処分に係る聴聞の通知を受け取ってから、許可取り消し処分がされるかどうか決まる日までの間に、廃業届を出した場合は、その届出の日から5年間許可申請ができません。いわゆる「処分逃れ」はできないということです。
第5号
許可を受けようとする者が、第六十条第四項の規定による検査が行われた日から聴聞決定予定日(当該検査の結果に基づき一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消しの処分に係る聴聞を行うか否かの決定をすることが見込まれる日として国土交通省令で定めるところにより国土交通大臣が当該許可を受けようとする者に当該検査が行われた日から十日以内に特定の日を通知した場合における当該特定の日をいう。)までの間に第三十二条(第三十五条第六項において準用する場合を含む。)の規定による事業の廃止の届出をした者(当該事業の廃止について相当の理由がある者を除く。)で、当該届出の日から五年を経過しないものであるとき。
監査を受けてから聴聞が行われる予定日までの間に、廃業届を出した場合も、その届出の日から5年間許可申請はできません。
第6号
第四号に規定する期間内に第三十二条(第三十五条第六項において準用する場合を含む。)の規定による事業の廃止の届出があった場合において、許可を受けようとする者が、同号の聴聞の通知が到達した日前六十日以内に当該届出に係る法人(当該事業の廃止について相当の理由がある法人を除く。)の役員であった者で、当該届出の日から五年を経過しないものであるとき。
第4号の場合に、その届出日から60日以内に法人の役員であった人は、廃業届提出日から5年間は許可申請ができません。ここでいう役員は、役員と同等以上の職権又は支配力を有する者を含みます。処分逃れをした場合、個人事業主としてすぐに新しい許可申請をすることはできないということです。
第7号
許可を受けようとする者が営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者である場合において、その法定代理人が前各号(第三号を除く。)又は次号のいずれかに該当するものであるとき。
個人事業主本人や法人の役員が未成年者である場合は、申請者本人はもちろんのこと、その法定代理人にも欠格事由が適用されます。
第8号
許可を受けようとする者が法人である場合において、その役員のうちに前各号(第三号を除く。)のいずれかに該当する者があるとき。
申請者が法人の場合は、役員全員が第3号を除く欠格事由に該当しないことが必要です。ここでいう役員は、役員と同等以上の職権又は支配力を有する者を含みます。
2. 常勤の役員が合格しなければならない「役員法令試験」
許可申請をした翌月以降の奇数月に役員法令試験が実施されます。これは、許可の審査基準の一つである、「貨物自動車運送事業の遂行に必要な法令知識を有すること」を確かめるためのものです。この試験に合格しなければ、許可は下りません。
試験の概要
- 受験対象者:
申請する法人の常勤役員のうち1名(個人事業主の場合は事業主本人) - 実施時期:
許可申請書を受理した月の翌月以降の奇数月に実施 - 試験内容:
貨物自動車運送事業法、貨物自動車運送事業法施行規則、貨物自動車運送事業輸送安全規則、貨物自動車運送事業報告規則、自動車事故報告規則、道路運送法、道路運送車両法、道路交通法、労働基準法、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(平成元年2月9日 労働省告示第7号)、労働安全衛生法、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律、下請代金支払遅延等防止法の各法令から、法令試験の実施日において施行されている内容から出題 - 出題方式:
〇✕方式および語群選択方式で全30問 - 試験時間:
50分間 - 合格基準:
80%(24問)以上の正解が必要
関係法令の条文集(六法など)の持ち込みは認められておりませんが、関係法令等の条文が記載された条文集が配布されます。ただしこの資料への書き込みは不可です。そして試験終了時に回収されます。
もし不合格になったら?
役員法令試験は2回まで受験が認められています。
- 1回目の試験で不合格
次の奇数月に実施される試験を受験できます。 - 2回目の試験も不合格
申請は却下処分となります。ただしすぐに申請し直すべきなので、申請の取り下げをするのが一般的です。
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